「快適な働き方ってなんだろう」
働き方というテーマは大学の時から興味があり、卒業論文でもこのテーマを扱いました。
これを追求したくて、お客様により効率的な働き方ができるようなITソリューションを提案できる企業に就職。
しかし、経験を積むうちに「確かに、ITは働き方を効率的にするけど、『働き方改革』にまでは至らないなぁ…」と思うようになりました。
デンマーク人の働き方を見ていて、『働き方』を快適にするのは、マインドセットや文化の問題であると思ったので、そのことについて書きます。
統計から見るデンマークの働き方
そもそもデンマークはワークライフバランスが取れているというイメージがあるけど、どうなの?を統計から見ていきます。
まずは、働いている時間を表す「労働者1人あたりの平均年間労働時間」。
デンマーク:1408時間
日本:1710時間
経済協力開発機構(OECD)2017年度版Average annual hours actually worked per worker
12ヶ月稼働、月間の稼働日数を20日とすると、デンマークは5.8時間/日、日本は7.1時間/日。
9時出社、昼休憩1時間と仮定すると、デンマーク人は16時前には帰宅。日本人は17時過ぎに帰宅、というイメージですね。
真っ先に思ったのが、日本の数値、実感とかけ離れている!
前職が営業職ってこともあり、17時過ぎに帰宅してる人なんて見たことありません。
友人でも企業に就職した人で、このような生活をしている人は聞いたことないですね。
日本のデータは管理調整機関による月次労働調査で収集された従業員雇用データなどを統計局がまとめたものだそうですが…サービス残業の数値をきちんと反映したら、もっと上積みされそうです。
一方で、デンマークは実感と一致しています。16時代に帰宅という話はよく聞きます。
デンマークは、高福祉国家ということもあり国民の8割が公的機関で働いているということにも関係してきます。
次に、思い浮かぶのは、労働時間が日本より短いのでは、経済的に豊かなのかな?という疑問。
「経済的な豊かさ」と国際比較するに当たって、一般的な指標である「国民一人あたりの国内総生産(GDP)」を比較してみます。
デンマーク:51,496ドル/556万円
日本:43,301ドル/467万円
公益財団法人日本生産性本部 2018年度版労働生産性の国際比較|日本生産性本部
デンマークの人口は577万人程度で、兵庫県と同程度なので国としてみたら日本の方が経済規模は大きいです。ですが、一人当たりではデンマークの方が高いですね。
ちなみに、働き方の国際比較をする上でよく聞くワード、就業者1人当たりの「労働生産性」は以下の通り。
デンマーク:105,454ドル/1139万円
日本:84,027ドル/907万円
公益財団法人日本生産性本部 2018年度労働生産性の国際比較|日本生産性本部
この指標は、国内総生産(GDP)等の経済的成果を分子とし、就業者数や就業時間などを分母とする計算式で表される指標で、一般的に「労働の付加価値」を表すと言われます。
次に有給休暇。
デンマーク:5週間(35日)/年(消化率ほぼ100%)
日本:20日/年(消化率50%)
HUFFPOST(2018/12/10)有給取得率、日本が3年連続最下位。取得すると「罪悪感を感じる」は世界最多 | ハフポスト
「でも日本は祝日が多いから!」なんて言われることもありますが、祝日日数はデンマーク14日、日本22日。
有給消化と祝日を足すと、デンマーク49日、日本32日。17日以上も多く休んでるのかデンマーク人…
デンマーク大使館も自慢しちゃってます(笑)
いよいよ夏本番!デンマークでは一般的に年間6週間の有給休暇のうち、3週間は連続で夏休みを取る権利が認められています。学校や仕事を離れてリフレッシュするんですよ! pic.twitter.com/PKNe8uckEe
— 駐日デンマーク大使館 (@DanishEmbTokyo) 2018年6月30日
「幸せな国」デンマーク
そんなデンマークは、「世界幸福度ランキング」の上位常連国。
「世界幸福度ランキング」とは、国連が発表している調査。幸福度を6つの指標(国民1人当たりのGDP、社会保障、健康寿命、人生選択の自由度、性の平等性、汚職のなさ)で定義し、156ヶ国に行っているものです。
デンマークは、2013年、2014年は1位に輝き、話題になりました。
2018年度は3位。日本は54位です。
United Nation Overview | World Happiness Report
前項目の統計から見ると、
- 労働時間が短い
- 休みが多い
- 付加価値の高い仕事をしている
- 付随して、給料が高い
ので、「そりゃ幸せでしょうよ…」という感想しか出てきません。
幸せの定義は本当にこれで合っているのか?という議論は当然あるものの、「働き方」に関してデンマークから学ぶことがあることは間違いありません。
デンマーク人の働き方マインドセット
デンマークへフォルケホイスコーレ留学に来てから、周りのデンマーク人の働き方を見ていて効率的だ、これは真似したいと思うことをいくつかリストアップします。
フォルケホイスコーレとは?
時間厳守
時間を守る几帳面な国民性と言ったら日本なんじゃないの!?というイメージもありますが、日本が守るのは開始時間のみ。
それ以外に関しては、デンマーク人の方が守っています。
例えば 、定時が18時と言ったら、18時。
時間はそれしかないものとして考えます。残業があることが前提ではないんですね。
その中で仕事を終わらせるよう無駄を省く。それに間に合わないことは、延期する、交渉する、諦める、諦めてもらう等している印象です。
ホイスコーレで集会がある時も、時間内に終わらせます。終了時間厳守。
対話して共有する
デンマーク人は疑問点、気になる点はすぐ話して共有。
そのことで、タスクの理解度や腹落ち感を共有してから仕事に取りかかるので、とても効率的です。
また、話すことで自分の頭の中も整理されるので、フルスピードで仕事に取りかかれます。
ホイスコーレでも学校の課題などを話し合う集会があるのですが、「これは日本人だったら口に出さないな」ということもバンバン意見が飛び交います。
そのことで、誰かが不満をためることも、我慢することもなく、組織全体にとってはプラスです。「そんなことを考えている人もいるのね」という点でも気付きにつながります。
本音で意見を言い合っても、険悪な雰囲気になっているところは見たことがありません。
デンマークは民主主義を大切にしている国で、幼い頃から自分の意見を言うことを訓練しています。
日本では、「自分の意見を言う」ことは教育の主軸にないですが、訓練次第というところでしょうか。
わからないことはわからないと言う
前項の「対話」と共通していますが、わからないことは無理して答えようとしない、が徹底されていると感じます。
自分も前職で営業をやっていた際にはお客様に対して「わかりません」とはなかなか言えなかったですね。持ち帰って回答、などしていました。
「かゆいところまで手が届くサービス」は日本だと需要があるので、ここはビジネスとの兼ね合いで難しいところですが…
そもそもデンマークでは就職活動の時にディプロマ(その分野での卒業証書や資格)が必須なので、仕事に就く時に専門分野と業務範囲が決まっていることも関係します。
デンマーク人にとって、「仕事は学校で覚えるもの」。
日本だと大学の専攻と仕事が必ずしも直結していないので、業務範囲も専門分野も明確ではありません。(特に文系職種)
だから「調べてなんとかしよう」というマインドになりがちなんでしょうか。
体裁にこだわらない
何かを始める時には、段取りや事前準備、説明は最小限。
デンマーク来てから、この部分、本当に楽だなぁと思います。
メンバーが納得して進められればOK。
あと、年齢が下だから発言を差し控えるということも少ないです。
当然印鑑文化もありません。
日本でできることは?
デンマーク流の働き方を快適にするマインドセットは、デンマークの文化。
自分の意見を言うということは小さい時から刷り込まれていますし、体裁にこだわらないリベラルさも国民性です。
では、日本で真似できないかというとそうではありません。
文化=無意識の決まりごと、だとするのであれば、意識的に決まりごとにすればいいのでは?と思います。
例えば、ワークライフバランス社小室社長は、「朝メール・夜メール」という手法で「その日の業務は何時までにどこまでやるのか」ということを宣言することで効率を高める方法を紹介しています。
これは「時間厳守」「対話して共有する」という要素を取り入れられてますよね。
デンマーク流のマインドセットを見える形で落とし込む。これは自分が日本に戻ったら何かしらの形で実践します。
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